2001/07/17(火)  うわさの女

昨夜 居酒屋から戻り、つい横になったらいつの間にか熟睡していた。『あっ』と目覚めると6時半。化粧も落とさず汗も流さず寝てしまっていた。
でも今日は自由に行動できる日なので焦る必要もない。夕方仲間達と合流し平野にある民宿に行くが、それまでは竹富島でのんびり楽しむだけ。竹富島には船で10分、島内は歩きまわってもそれほど時間はかからない。チェックアウトは11時まででよいので、ゆっくりシャワーを浴び、朝食をとり、荷物の整理をし、仕度を整える。

着物好きな私としては、今回の楽しみの1つに”南の島で浴衣三昧”があった。荷物の中には浴衣を2セット入れてきた。本当は3セット詰めようとしたがバッグがパンパンで諦めたのだ。のんびり自由にまわれる竹富島なら浴衣もいいだろう思い、今日まず着ることにした。
暑いのは覚悟の上よ!
浴衣は、紫と焦げ茶を混ぜたような地色に蝶の絞りの柄。帯や小物もシックにまとめてみた。

浴衣姿で大きな荷物をゴロゴロ引いてチェックアウトする私をフロントの人はどう思っただろう・・・。
荷物は夕方までホテルで預かってもらい、いざ竹富島へ。外へ出た瞬間はさほど暑さは感じなかった。八重山諸島の気温は平均33℃位でそれほど高くはないのだ。ただ直射日光が強く日ざしは痛い。浴衣だと肌に直接あたらないので思ったほど暑さを感じなかったのかもしれない。
(この時は・・・ と後から思う)

11時発の船に乗る。船内に落ち着くと声をかけられた、『あれっ、昨日のおねえちゃん だよねぇ?』。昨日の西表島ツアーで途中までコースが同じだった”おじさん4人衆”だ。昨日とは雰囲気の違う和服姿に面食らったらしい。昨日の会話で、私が今日平野に移動する事を知っており、女性一人旅&浴衣姿だったからか、『今日はやっと彼氏に会えるんだねぇ、良かったねぇ』と勝手に想像してくれていた。
ふぇ?彼氏?そんな旅ではないのだが、せっかくの想像をぶちこわす必要もないのであえて説明はしなかった。

竹富島ではまず名物の水牛車観光で集落内をゆっくり見学。いきなり歩き回るより島内の雰囲気がわかっていい。それに昨日の由布島の水牛車ですっかり水牛車がお気に入りになってしまった!歩くのとほぼ変わらないスピード、この のんびり感がいい。人間、速い乗り物ばかり乗ってちゃダメよ。
また地元人の説明があればこそ、その土地をよく知れるというものだ。島の人口300人弱。長寿のおじいちゃんの誕生日には島全体でお祝いした話。何をするにも皆で助け合って暮らしている話。電気や水道の話。みかけは"ただの家"にしか見えない島唯一の床屋さん。やっと医師が来てくれて出来たありがたい病院。子供が3人以上いないとすぐに閉鎖されてしまう幼稚園や学校。道の突き当たりには必ず置いてある魔よけの石。などなど、見聞きしながら回って30〜40分。
途中この水牛さん便をもよおして、大量のウ○チをする瞬間〜終了まで私達にしっかり見せてくれる大サービスあり。

お昼はとっくに過ぎていたが、まだお腹は空いてなかったのでコンドイビーチに行ってみることにした。集落内は小さいエリアであったがコンドイビーチまでは歩くと結構の距離があった。それに途中で道を間違えてしまい多く歩くハメに。因みにここでは皆レンタサイクルを使っている。
ホテルから出た時には浴衣でもイケそうだと思ったが、とんでもないっ!どんな格好だって暑いよ。 汗だくでビーチ到着。
汗をかけば水分が欲しくなる。ビーチには車の売店があったので飲み物を買い、のどを潤す。そこでお店の人に『なんで浴衣を着ているの?』と聞かれる。今日ここに来るまでに出会った人達もきっとそう思っただろうが、不思議と会話の中では理由は聞かれなかった。『意味はないんですけど、南の島で浴衣が着たかったんです♪』と答えると、『珍しい人だねぇ。小さい島だから今日あたりうわさになってるよ〜、きっと・・・』と笑われた。
行き交う人々にそんなにジロジロ見られた気はしなかったが相当ヘンな観光客と映ったことだろう。
でも、好きなものというのは理屈抜きで好きなのよのね。何が楽しくて汗だくで浴衣着てるの、と言われようが脱ぎたいとは思わなかったし、こんな中で歩いててもやっぱり着物を着ているのが嬉しい私。

ビーチを後にして、食事に「竹の子」という店に入る。涼しい店の中で八重山そばを食べていると、ドアがガラっと開くやいなや『よぉっ!また会ったな』と、あの”おじさん4人衆”の一人が顔をのぞかせた。彼らは外の日陰テーブルで食後の休憩をしていたらしいが、私が歩いてくる姿が見えて、あぁまた着物が来た来た〜 と話してたとか。そりゃ遠目からでも絶対わかる格好だわよっ。
これで3度目の偶然だ。おじさん4人衆はレンタサイクルに乗って店を後にする時にも『んじゃ、もうさすがに会わんと思うから、気ぃつけてな!』と挨拶にきてくれた。おじさん達も楽しい旅を続けてね、ありがとう。
一人の行動では近くにいつも話す相手がいるわけではない。やはり言葉を発する回数が減る、会話が減る。だからちょっとしたきっかけから生まれる短いおしゃべりでも、意外に気を弾ませてくれたりする。別に気分が沈んでたわけではないよ。初めての土地でとりあえず知った顔をみるとホッとしてしまうのかもね。

帰るまでにはたっぷり時間があったのでしばらくその店で涼む。昨日の西表島ではほとんどがバス移動だったので炎天下を歩いたのは今日が最初、とてもすぐに外を歩こうという気はおきかった。とはいえ1時間も店に居ると飽きてきて、汗もひいたことだし外へ歩き出す。
あれっなんだか雲行きが怪しい・・・と思いはじめたら、案の定雨が降ってきた。当然傘の用意などなく、ちょうどいい具合に近くに郵便局があり雨やどり。雨はなかなか止みそうになかったので、せっかくだからここの消印の葉書を出そうと思いたつ。が、アドレス帳はない。住所をそらんじている場所といえば・・・ 実家。ま、いいか。旅行先から親に手紙を書いたのは初めてだよ。
そろそろ帰らなければ という時間には雨も上がってくれた。

石垣港の桟橋で4時にイソップさんと待ち合わせをしていた。そこで私をひろって、空港でオーちゃんをひろって、平野へ向かう。この旅行で合流する仲間達はすべて元職場が同じだったという繋がりだ。イソップさんはもう20年近く毎年この時期に石垣に来ている"達人"で、事前に色々とアドバイスをもらった。既に平野入りしており、今日は私とオーちゃんの為に車で迎えに来てくれるのだ。

竹富島からの船はちょうど4時に桟橋に着く便。石垣に近づく船内でイソップさんからの携帯が鳴る。戻る船の中にいる事を伝えるとまもなく船は桟橋に着いた。船内の窓からイソップさんらしき人が見えた。下船して近づいていっても船にカメラを向けたままなので何をしているのかと思いきや、私が船から降りるところを撮ってあげようとカメラを構えていたという。でも、まさか着物ということはあるまい と私は対象から外されていたのだ・・・。
それで改めて写真を撮ってもらう。

預けてあった荷物をホテルミヤヒラに取りに行き、石垣空港へと向かう。オーちゃんの飛行機は定刻通りに着いて、ほどなく3人揃う。ともに久しぶりの面々。オーちゃんは今年で5度目の石垣島だそうだ。イソップさんから石垣島での楽しさを教えられた一人なのだろう。

車は一路、平野へと走る。
この地図の下方、黄色い所が市街地で離島用桟橋や空港がある場所。平野はそこから一番遠い、北の端だ。平野の民宿の名前は「南の北の家」という。南の島の一番北にある所だからね。
白保あたりを過ぎてからは、たまにひょっこり出てくる集落の家々と、山に海にさとうきび畑に牛舎などののどかな田舎の風景だ。途中、無人の露店でイソップさんが200円のパイナップルを買い、しばらく車内にパイナップルのいい香りが漂う。
(特大200円、大100円、小50円なり)
1時間くらい走って民宿「南の北の家」に到着。
浴衣を脱いで部屋着でくつろぎ、庭に置かれたテーブルセットで3人ビールでカンパ〜イ!このビール、「オリオン・スペシャル」という今年出た発泡酒なのだがスキッとしていて美味しいのなんのって。

夕食前に近くの海まで散歩をする。これが聞いていた平野の海かぁ・・・。
明日からはどんな日々になるのだろう。今はまだ予想もつかない。

つ・づ・く

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